今日の恭麿
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 > これは変だよ  > 論理的思考(4)


 

コンピューター相手だと、あきらめているのか、怒りもせず、コンピューターの要求する書式にしたがって、入力やオペレーションをするエンジニアなのに、対人間となると、とても非論理的な言動をする方々がいる。

コンピューター相手に

  • 住所
  • 氏名
  • 電話番号
といった情報を入力するとき、全角や半角の指定があったり、禁則文字の指定がある場合に、
 「○○○○を入力しなおしてください。」
とか
 「間違った入力をしています。」
などといったメッセージに出会うことがある。コンピューターに当たったりしても解決しない。毒づいてもだめだ。要求する書式で入力するしかない。

コマンド入力でも、syntaxに沿ってない入力はErrorとなる。受け付けられる入力を試行するはず。

ところが対人間だと、質問に対して正確な回答をしていない側が、正確な回答は再要求された場合に、質問者に対して理不尽な怒りをあらわす場合がある。再回答をしない場合もあるのだ。無理が通れば道理引っ込むである。

Episode 1

先日、社外の方が実験室に見えることがあった。セキュリティの観点から、その方を一人にすることがないように僕が属するチームメンバーで、必ずどなたかが同席することにした。その日はほとんどその実験室で過ごしたので、交代で過ごすということなく、全員がいることとなった。

毎日17:00からミーティングがある僕は、
 「あの社外の方が帰るまでは、どなたかが実験室で同席するようにしてくださいね。」
とお願いして会議に出た。18:00前になって、その社外の方に質問する事項が会議で出た。そこで、
 「まだ彼が実験室にいるかどうか、もう帰られたかどうか。」
を確認することとなった。ミーティングは居室の会議スペースで行われている。チームメンバーの何人かが戻ってきているのに気付いていた僕は、その一人に
 「○○さんはもう帰られましたか?それともまだいらっしゃいますか?」
と質問した。それに対する回答は、
 「全員で実験室に残ることないと考え、TさんとIさんがあちらに…○×■△★#$%。」
というものであった。○○さんがまだいらっしゃるのかどうか、はなはだ不明である。もっとも、よく考えると、まだいらっしゃるからどなたかが残らねばならないのだ、ということもあるだろう。ただこのような推測は、十中八九当たるという程度の確率の推測であり、確認ではない。

回答者はどうやら、
 「○○さんがまだ実験室にいるのに、なぜみんなは戻ってきたの?彼を一人で実験室に残すのは、セキュリティ違反だよ。あの部屋には秘密がいっぱいあるのだから。」
とでも、怒られることをあらかじめ予測していたが如く、まず言い訳から始まったようだ。もちろん誰も実験室に残らず、社外の方である○○さんを一人で実験室に残してしまうったのならば怒られて当然だ。きっと、彼の人生経験の中で、まともに事をこなしているにもかかわらず、それを確認せずに
 「社外の人間を一人にした実験室に残すとは何事か!秘密が知られたらどうする?」
的に、すぐ怒鳴り始める理不尽に怒るボスや上司についたことがあるのでしょう。(僕の人生経験でもありますよ。

今回、僕が知りたかった答えは、
 「まだいらっしゃいます。」
とか
 「もう帰られました。」
である。僕の更なる、
 「○○さんはもう帰られましたか?それともまだいらっしゃいますか?」
という質問で、そのことに気付いた彼は、
 「まだいらっしゃいます。」
と回答をくれた。やれやれ、良かった。ホッ

Episode 2

別な日に、また実験室でのこと。メンバーに任せてデータ取得作業をしていた。そこで、どうやら、何らかのリムーバルメディアが必要となったようである。
 「スティックメモリーかフロッピーはないかな?」
なんて話をしている。僕はフロッピーディスクならば心当たりがあるので、
 「何が欲しいの?」
とみんなに訊いた。すると、
 「あちらの部屋のPCのファイルをこちらのPCにコピーして云々…。」
ということを説明し始めた人がいた。これでは彼らがどんなリムーバルメディアを欲しているのかわからない。再度、
 「何が欲しいの?」
と訊いた。またまた、
 「だからぁ、あちらの部屋のPCのファイルをこちらのPCにコピーして云々…。」
という。再々度、
 「何らかのリムーバルメディアが欲しいんでしょ?何が欲しいの?フロッピーならばあるよ?」
というと、やっと
 「フロッピーもしくはメモリースティックが…。」
ときた。出来れば、「…がいります。」まで、語尾を省略せずに言って欲しかったけれどね。

Episode 3

他のチームの協力を得て、実験ネットワークにトラフィックを流してもらうこととなった。いざデータ取得という段になって、僕が聞いていないことを語っているメンバーがいた。そこで、
 「それはどなたから聞いたの?」
  と質問すると、
 「もう既にトラフィックは流してありますから、おもっいっきりキャプチャしてくださいと言ってました。」
という回答が返ってきた。正直、誰が言ったのかよくわからん。あのチームのチーフのことだから、メンバーのS君やAさんにも、僕のチームからの協力依頼があったことを話しておいてくれて、あちらのチームのどなたでも話がわかるようにしておいてくれたのかも知れぬ。だとすれば有難いことであるが、しかし、確認された事項ではない。そこで回答になっていないので、再度、
 「で、それはどなたから聞いたの?」
と質問すると、今度は、すごい剣幕で、
 「だから、もう既にトラフィックは流してありますから、おもっいっきりキャプチャしてくださいと言ってましたって事ですよ!!。」
と怒鳴られてしまった。なんかとても理不尽である。

  • 午前中にあちらのチームのチーフとお話をしたのが僕であること(確認できた。自分がしたことだから)
  • どうやらそのチーフと彼は午後お話したらしいこと(未確認)
  • そのときの内容が、「もう既にトラフィックは流してありますから、おもっいっきりキャプチャしてください。」らしいこと(未確認)
が推測できた。しかし、確認された事項ではない。結局怒り出した彼の口からは、「どなた?」に対する回答はなかった。(未だにない。)しかし、これらの言動から推測すると、
 「これらの言動から誰が言ったのか判れよ!察しろよ!何で判らないんだよ!」
というのが怒り出した彼の言い分であるらしい。とてもテレパシーとかの超能力を身に付けていないと判らないことだとおもうのだが。
※ 残念ながら僕はテレパシーや読心術といった能力を持っていない。
※ 「察する」「判ってあげちゃう」というレベルならば、僕にも出来る。しかし、それは推測だ。確認された事項ではない。

常識という言葉があるが、その人間の生きてきた環境・知識のバックボーンが異なれば、それぞれ個人持つ常識は異なる。目玉焼きに醤油という方もいれば、ソースという方もいるし、味噌という方もいる。お正月の雑煮でさえ、味噌仕立てと醤油仕立てと更にいろいろ・・・ある。自分の食べ方が本流、後は邪道・常識外れと誰が決められよう? 自分以外の方法は常識外れ、あんたは非常識という方ほど失礼な存在・傲慢な考え方だ。

「察する」も同様。その人間の生きてきた環境・知識のバックボーンに重なる部分が多いほど、「察する」に正解が多くなる。それは「察する」が、テレパシーではなく、相手との確認作業ではなく、あくまでも推測・憶測であるからだ。 (口外するのか心の中で思うか別にして)「察することのできない奴、感の悪い奴、場の雰囲気を読めない奴。」
と非難する前に、自分が傲慢でないかどうかを考えてほしい。

どこか別のところでも書いたことだが、「結婚して35年の夫婦の間で、だんなが
「おいっ」といったときには「お茶」、
「オイッ」といったときには「新聞」、
を持っていくことが出来る奥さん」なんていうことが可能なのは何もテレパシーが使えるようになったのでなく、共通経験を重ねて、お互いだけで通じる「常識」を構築できたに過ぎない。他では通用しない。

非論理的な人から言わせるとコンピューターは融通の利かないものであるという。コンピューターという論理的で非人間的なものを対象に実験をしていると、憶測や推測を超えて確認することが必要という状況がある。今回も少なからずそのような状況の一種である。

  • 「もう既にトラフィックは流してあった」としてもそのトラフィックがこちらの要求するものであるのか、
  • トラフィックを流した相手チームの誰かは、僕と打ち合わせたあちらのチーフと認識が合っているのかどうか、
まったく確認できていない。

「実験結果がどうしてそうなったのか」を推察する段階ならばともかく、実験の条件・プラットフォームは、これから行う実験で要求されている内容を満足しているものなのかを、確認すべきである。推測で済ませてはいけないはずだ。そうでないと正確な結果は期待できない。私にはそれを確認する責任がある。彼はたとえ間違った条件だとしても責任は追及されない立場である。

これも、精神修養としよう。

今日の標語

チーフ殺すに刃物は要らず、言うこと一つ聞かなきゃよい

更新日:25 Jul 2004



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